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「君から離れなければその答えは見つからない」
~時空を越えてもう一人の自分に~
前略 少年・松本秀人様
やあ、久し振り。
元気でやってるかい?
君に手紙を書くのは初めてだね。
君とはもう何年逢ってないんだろう?
僕が29歳ってことは
十年以上も逢ってなかったことになるね。
時間の経つのは本当に早いね。
あの頃の仲間たちも元気でやってるかい?
針を落とすとスピーカーから飛び出して来て
僕たちをワクワクさせてくれた
あいつらのことだよ。
あの頃は食事をするのも寝るのも忘れて
一晩中騒ぎ続けたよね。
懐かしいなぁ。
もし逢うことがあったら
よろしく言っておいてくれよ。
そうそう、実はアルバムを作ったんだ。
僕の初めてのソロ・アルバムだよ。
「HIDE YOUR FACE」っていうんだ。
テーマは初期衝動。
でもね、出来上がって思ったんだ。
もしかしたらこのアルバムは
君に聴いてもらいたくて作ったんじゃないかって。
今だから正直に言っちゃうけど
あの頃の君ってさ、どっちかっていうと
なんでもない子供だっただろ?
デブで運動も出来ないし
そのくせなんか理屈っぽくて
結構イヤなガキだったよね?
そんな君がガラッと変わった瞬間のこと
覚えているかい?
そう、君が初めてあいつらに
ロックに出逢ったときのことだよ。
もちろん覚えているよね?
だって天命を与えられたんじゃないか?って
思えるぐらい衝撃的だったもんね。
さっき僕が言った初期衝動っていうのは
そういうことなんだ。
僕は今でも
あのとき君が感じたワクワクと
今僕が感じているワクワクとは
同じだと思ってるんだ。
このアルバムはそれを確認するために
作ったような気がするんだよ。
だから自分でいうのもなんだけど
目茶苦茶なバランスのアルバムになっちゃったんだ。
インタビューを受けても
「バラエティーに富んでますね」としかいわれないしさ。
君ならわかってくれると思うけど
しょうがないよね?
だって別にノウハウがあるわけじゃないし
他の人が聴いたらなんとも思わない
なんてこともあるからね。
でもね、僕はどうしても知りたいんだ。
なぜ僕たちがあんなにワクワクしたのかを。
君と別れてからこの十何年間
僕はその答えを探す旅をしていた
といっても過言ではないな。
これまでは君から離れなければその答えは見つからない
と思っていたんだけど
今ではその答えは君と一緒に過ごしたあの頃にしか
ないような気がするんだ。
だから今回の旅は
君と離れていた十何年間を遡る旅だったんだ。
そんな旅の中で見つけたワクワクを
もし君が同じだと言ってくれたとしたら
「うん、うん。わかる、わかる。
全然変わってないな、お前は」
って言ってくれたとしたら
僕はこのアルバムを作った甲斐があったし
まだまだ終わりそうにないこの旅を
これからも続けられそうな気がするんだ。
とにかく聴いてみてくれよ。
また旅先で新しいワクワクを見つけたら
手紙を書くよ。
あいつらにはくれぐれもよろしく
それじゃ。
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