先頃発売された、ホンダのクォーターVツインスポーツVTRをご紹介する。
「VTR」は、現在、スタンダードな「VTR」、ハーフカウルを装備した「VTR-F」、足つき性を向上させた「vtr TYPE LD」 がラインナップされている。
その中で、今回ご紹介するのは、新たにタイプ設定されたVTR Type LD。VTRをベースに、前・後サスペンションに専用セッティングを施され、それによってVTRより15mm低い740mmのシート高となり、一クラス下のバイク達もひけをとらない良好な足着き性と軽快な操縦フィーリングが両立されているという。
VTRは全タイプにグリップ力と剛性に優れるラジアルタイヤを採用することで、コーナリングやブレーキング時のフィーリング向上を図り、同時にリアタイヤの偏平率を従来モデルの70％から60％に変更してタイヤ径を縮小、トランスミッションのローレシオ化と同様の効果を得ることで加速フィーリングの向上が図られる。また、VTRとVTR-Fは、リアサスペンションのセッティングを変更して乗り心地の向上も行われた。
エンジンは、かつて同クラスのライバルであった2ストロークモデルに対向する性能を求められて登場してから進化と熟成を重ねてきた水冷4ストロークDOHC 4バルブV型2気筒。さらに進化を続けてこの世代のVTRの心臓部として存在感を高める。この伝統のVツインエンジンはスムーズで、充分な扱い易さと軽快さをもっている。
しかし、最大の興味は、新たなセッティングの足周りとのLD化の成果。VTR Type LDには、跨がった瞬間、その250ccスポーツモデル中最も低いであろうシート高に驚く。やはり一クラス下のモデル並みのコンパクトなハンドル幅も同様の印象となる。しかし、走り出してしまえば、
Hondaは、このVTRのType LD、LowDown化に極めてベーシックに真剣に取り組んだ。シート高を落とすために、フロントフォークの自由長を短縮、ストローク量とバネレートを変更しステアリングヘッド位置を低くし、リアではタイヤの扁平率を高めて外径を縮小してシート高を落とし、同時にサスペンションのプリロードの変等で最適な操安を確立している。
加えて、シートを薄くしたのではないために、着座位置とステップの位置関係は良好で、シート高は低いが下半身の窮屈さはないことも大きなポイントである。
それらの結果、街乗りから高速走行、ワインディングでも軽快でハンドリングがもたらされ、さらに高速走行時の安定性と乗り心地に優れ、低い車体ながら疲れ知らずに長距離走行が可能となる。
Type LDは、250ccクラスにあって、低いシートと車体でコンパクトさを実現、思い切り乗りやすさを獲得しながら、長いホイールベースでの安定性も両立、スムーズで扱い易いエンジンによってオールマイティーで乗りやすいバイクに仕上がっていた。最早見馴れた感のある外見にも関わらず、その走りの個性は中々新鮮だった。
（モリ ヒサシ）