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治療のステップ
00:00 OP
01:13 生きていることは不安
04:50 益田メソッド 治療のステップ
10:48 主観2.0
16:54 本日の宿題
本日は「治療のステップ」というテーマで、治療はそもそもどういう風に行うのか、ということをまたお話しします。
これは何度もお話しした話なので、また同じ話するの、と色々な人に思われそうですけど、定期的にお話ししたいなと思います。
なかなか人生をどう生きるかというのはわかりにくいので。
僕たち精神科医はどういう風に命を捉えているのか、人生を捉えているのか、という話でもあるので、お話しします。
■生きていることは不安
とにかく生きていることは不安だし、混乱していると思うんです。
新しいことを知れば、世の中はもっと見えてくるのか、絶対的な解、世界観があるのかというと、そういうわけではなくて、人間が認識していることは世界のごく一部しか扱いきれないんです。
世界というものが持っている、宇宙が持っているデータがありますよね。
データの中のごく一部しか人間の脳みそに収めきれないし、扱いきれないんです。
宇宙というものの中にある人間という複雑なメカニズム、脳で起きたり、心という現象を生み出しているメカニズムさえ僕らの認識、脳では扱いきれないです、情報量が多すぎて。
情報が多すぎるので扱いきれないんですけど、その都度、新しい世界観というか、カットというか、その時に必要な情報を脳内である程度処理をして解決に近づけていく、生存に結びつけるというのが心の役割といえば役割なんですけど。
結論はそれだけだと言えばそれだけなんですけど、これがなかなか理解しにくいみたいです。
宇宙が持っている膨大なデータ、そしてその中のごく一部である社会というデータでさえ膨大であり、それは僕らの脳の情報処理では追いつけないよ、と。
追いつけないながらもデッサンというか、情報量をそぎ落としてデフォルメすることによって、ある程度扱えるものにして、その中で最適解を選んでいくというのが、人間の脳の働きであり、心の働きであり、そしてその最適解を選び続けていく中で、寿命が来て死んでいく、と。
幼い時には情報の扱いが下手で、だんだん思春期に入っていっく中で脳が成熟化していく、中で扱える情報が増えていく。
そして、学習によってより扱えるものが増えていく。
扱える情報が増えていくと、世界の中で最適解を選びやすくなる。
最適解を選んでいくんだけど、年を取ってくると死んでしまう、ということです。
これが全てといえば全てなんですけど、でも僕らは生きている意味が必要だったり、心というものが必要だったり、自分とは何かということを探求したり、自分とはこういう存在であるということを認識したいので、そういう欲望を持ってますから、そういうデザインを利用しないと生きていくことが苦しくなったりするので、どういう創作が必要になるのかということになるんです、わかりやすく言えば。
治療のステップというので、僕は色々臨床していく中で、自分なりに足したり引いたりしながら、日本人のカルチャーを吟味したりしつつ、最新の精神科臨床の流行り、つまりマインドフルネスや認知行動療法などを加味して足したり引いたりした結果が、この臨床の益田メソッドと呼ばれるものになります。
■益田メソッド 治療のステップ
益田メソッドをホワイトボードに書いていたのですが、一回消してしまったんです。
ホワイトボードに取ってたやつを一回消して、データでは残してるんですけど。
ちょっと汚くなったんです。
だからもう一回書き直してよく使うところだけ残しました。
基本は①休息をしてよくなってきたら、②マインドフルネスをしつつ、学びと向き合いをして、そういう中で自分のこと、今の状況がわかってきたら、③目標、計画、行動、修正の段階に入る。
そして④これを繰り返すというのが治療の流れです。
今自分がどの段階にあるのかというのは、瞑想してみると目安がつきますよということを提唱してる感じです。
目を閉じて呼吸をするだけ、この5分ができないのであれば、今は休んだ方がいいな、と。
何も考えずに薬を使ってしっかり休んであげた方がいいし、自分で考えるというよりは誰かに助けてもらったり、言うことを聞いた方がいいのかなという感じです。
5分から30分くらいできるのであれば、行動というよりは最低限の意思決定に留めて、何かを学んでいったり、自分自身に向き合う時間に充てた方がいいなという感じです。
30分以上こうやってボーっとものを考えられるのであれば、この段階に入っていれば、自ずと今自分がどんなことをしたいのかなど目標設定をつけやすいので、目標を立てて、計画を立てて、行動、修正をしていく方がいいだろうということになります。
この瞑想の5分ですけど、この5分をどういう形で使うのが良いのかというのは、よくわからないんです、正直に言うと。
認知心理学の研究で、人の頭の中というのはそれぞれ違うということがわかってきていて、ビジュアルシンカーの人もいれば文字で考える人もいるし、頭の中に内なる声がある人もいればない人もいたりするので、完全にフローでなければいけないということはないんじゃないかなと僕は思っているんです。
深呼吸をしていれば、それに引っ張られて心臓の動きもゆっくりになっていき、そして脳の活動もリラックスしていくので、その基本さえ守っていれば、あとは何をしていてもいいのかなと思うんです。
この制限がある中で、もう少し身体的な追求をするのもいいし、自由連想法に従って何かを考えていてもいいし。
ただ、その考えの中に没入し過ぎていくとよくなくて、このいい感じの塩梅の呼吸というか、瞑想を美しくするということなんですけど、瞑想を美しくすることを続けていればいいということになるんですけど。
この「美しくしていればいい」というニュアンス、どうやって言語的に定義すればいいのかというのは難しいです。
今、自分じゃ言えないけど。
でも日本人だったら何となくわかりますよね?
こういう瞑想をしているにもかかわらず、自分の思いや自分の悩みを考え続けていたら美しくなさそうだな、みたいな。
お葬式の時と一緒で、念仏は聞いていなければいけないけど、念仏のことばかり聞いてたらダメで、やはりお葬式の後のことや、その時の親戚のことなども考えていなければいけないし。
かといって、故人のことを考えていないのも失礼な話なので、お葬式の実務的なことを考えるのではなくて、故人にも思いを馳せた方がいいし、でも思いを馳せ過ぎると念仏を聞いてないことになるから、ちょっとよくないわけです。
涙を流していても思いに浸りすぎているからよくないから、このバランスですよね。
日常で行うマインドフルネスもまさにその通りで、悩み過ぎず、かといって自分のことばかり考え過ぎず、というこの塩梅を目指すということになるんだけれども。
まあ難しい。
口で説明するのは難しいですね。
ただ、これも毎日やってたり、生活の中できちんと自分と向き合ったり、呼吸を意識するという時間、イメージトレーニングをする時間があれば、自分なりの解というものがわかります。
よくわからない時には、数が足りないということも多かったりするなと思います。
受容と妥協(仏教、禅)と書いてますけど、マニアックに仏教や禅を学ぶ必要は僕はないとは思うんですけど、日本人の中にあるそういうもの、常識というか、一般常識レベルでは少しずつ知っておく、再確認するという感じでしょうか。
目標や計画を立てるのも大事なんですけど、どの目標を重視するかというのは、それなりにセンスが問われたりします。
解決できないことや壮大すぎる計画を立てるとうまくいかないので、解決できつつ、自分が今取り組めることにちゃんと目標や焦点を当てるということが大事だったりするなという感じでしょうか。
というのがステップです。
■主観2.0
もう少しメタに考えてみると、基本的には今の悩みがあってモヤモヤとしている。
モヤモヤとして、世界をきちんと捉えられてなくて、この主観的な世界からきちんと客観的に物事を捉える必要があるんですよ。
整理・明確化していくということがあって、この客観的に世界を捉えて自分の弱さ、不都合な真実、今の状況を受け入れて、相手をこんな人間なんだ、自分はこんな弱さを持ってるんだ、と受け入れた上で、じゃあその上で何をしますか、という新しい価値観というか、世界観を作っていくということになるんです。
これが一つの流れなんです。
この新しい世界観を僕は「主観2.0」みたいな言葉で言ってますけど、流行っていないので失敗かもしれないですね、この名前付けは。流行ってるかな?
ちょっとは浸透してきたかもしれないですが。
この主観2.0は、結局、人生の正解とも言い換えることができるんですけど、これは個別的なんです。その人によって正解は違うんです。
前例がなかったりするし、周りの人には応援しがたい決断かもしれないですよね。
例えば、僕がKZfaqをやってるというのは、人が聞いたら応援しがたいわけです、最初は。
だけど、それを勇気を振り絞ってやる。
人生とはそういうことなんです。
今はぼんやりしているけど、客観的な事実、不都合な事実を受け入れて新しい世界観で生きる。
精神疾患がある人たちというのは、原則多くの人には理解されないですから、やはり理解されないし、理解できないんです。
多くの人たちは理解できないものの中で、差別と闘いながら、無理解と闘いながら、自分の価値観、世界観、物語を確立して行動していくということになります。
★動画の文字起こしはこちらのnoteに【全文掲載】されています。
note.com/wasemenblog
(文字起こし自体がない動画もあります)