美容医療による皮膚の破壊問題を理解する上で、皆さんが常に考えなければならないことは、その美容医療は皮膚のどこの治療なのか（どこを壊しているのか）、ということです。つまり、治療のターゲットは表皮なのか真皮なのか、ということです。 表皮は毎日次々と新しい細胞が生み出されており、古い死細胞（角質）はどんどん体から剥がれ落ちています。この表皮で起きているダイナミックな変化を肌のターンオーバーと呼んでいます。 表皮はいくら壊されても、次々と新手の表皮細胞が補充されるので、傷にはなりません。つまり、表皮は傷つけても再生する、というわけです。 一方、真皮は表皮のようなダイナミックなターンオーバーはしていません。皆さんは真皮はターンオーバーしないと覚えておくほうが良いと思います。 つまり、真皮は壊されてしまうと、その部分を元通りにすることができず（再生できない）、仕方ないので代用品（瘢痕組織）で欠けた部分を補って修復作業は終わりになります。 深い傷（真皮までえぐれるような傷）は傷跡が残る、と言われるのはこういう理由からです。 さて、ご質問のシミの治療ですが、シミとは通常表皮内の過剰なメラニン色素が原因で、その治療はメラニン色素の破壊もしくはメラニン色素を生み出している表皮内の細胞の殺害です。いずれにせよ、表皮に破壊がもたらされるだけで、真皮は破壊のターゲットではありませんので、表皮が速やかに回復すればそれで終わり、皮膚に傷跡が残ることはありません。 ただし、レーザーの出力を上げ過ぎて真皮まで破壊してしまうと、傷跡が残るような事態になることもあります。 ちなみに、レーザー治療と光治療（フォトフェイシャル等）とでは、使っている光の波長や破壊力が全然違っており、治療としても全く別物ですので、今一度しっかり調べて違いを理解されることをお勧めします。 レーザーであろうとフォトであろうと、それが表皮の治療であれば皮膚を傷つけているとは考えなくて良いと思います。

多くの方が勘違いなさってますが、レーザーという装置や方法そのものが悪いと言っているわけではなく、そういうものを使って皮膚のどこを治療（破壊）しているのか、というところが問題なのです。 表皮の破壊と真皮の破壊の違いについて、別の方のコメントに回答していますので探してみてください。 要するに、シミのレーザー治療は表皮破壊であり皮膚への影響は大したことないが、たるみに対するレーザー治療は真皮破壊と瘢痕化をもたらす、という考え方です。 それから、ホクロの件ですが、シミとホクロを同列に考えていては正しい判断はできません。 シミは表皮内にあり、ホクロは真皮に食い込んでいます。もっと言うと、シミはメラニン色素という「正常な」物質が「異常に」増えている状態なのに対して、ホクロはホクロの細胞という「異常な」細胞の集団が真皮の中で少しずつ増殖してできた良性腫瘍です。 腫瘍というのは、悪性であろうと良性であろうと、その塊を物理的に取り除くのが唯一確実な治療法です。 従って、ホクロの治療とは、メスで丸ごと切り取るか、レーザーで少しずつ削り取るか（良性腫瘍のレーザー治療の詳しい原理はご自分でお調べください）、いずれにせよ真皮にまで切り込む（削り込む）しかありません。 腫瘍を確実に除去するためには、腫瘍本体だけでなく腫瘍周囲の多少の正常真皮の破壊もやむを得ないことであり、その場合に生じる局所的な真皮破壊と、しわやたるみなどに対する美容医療の広範な真皮破壊を同列に考えて良し悪しの比較をするのは意味のないことだと思います。 ちなみに、ホクロを消す、という表現がありますが、そんなことは不可能で、あくまでも真皮の一部を削って（真皮に穴を開けて）ホクロを取り除いているだけですし、取った後は目立つか目立たないかという程度の差はあれ、必ず瘢痕組織が残ります。