「響け！ユーフォニウム」とその続きであるこの「リズと青い鳥」は、一度見ただけでは全然解りません。何度も見て隠された意味を表す表現に気付いて、さらに頭でよくよく考えて、初めて物語の意味が読み解けます。 しかし、「響け！ユーフォニウム」久美子１年生編をさらに読み解きますと、なんと物語の裏側に「血と才能」の問題に関する久美子の心の軌跡の物語が隠されていることに気付きます。完全に隠されています。 そしてこのリズや原作の久美子2年生編を手掛かりに更に読み解きますと、なんとその物語の更に裏側に、真のストーリーと真のテーマが丸々隠されているという、とんでもない作品だと気付きます。 それは久美子が自身の『罪』と向き合う感動の物語でした。つい最近それに気付きまして感動し驚愕しました。 で、リズで描かれるみぞれと希美の関係には、その久美子（つまり原作者）の『罪』との向き合いが隠されているんです。深い深い意味があるんです。 ------------------------------------------------------- P.S. 上記の読み解きの詳細をPDFの小冊子に纏めて公開ました。 詳しくは、私のチャンネルの概要欄を御覧ください。

ラストシーン、希美が何を云ったかはさして重要ではないんです。ここで重要なのは、希美が*初めて*みぞれに振り向いた！ ということなんです。それを表しているんです。それにみぞれが驚いた。 映画冒頭を思い出して下さい。希美は常に階段の上からみぞれに振り向きます。 みぞれに青い羽根を与えるシーン、愛玩動物（＝籠の鳥）に自分の楽しみを与える為に振り向いただけですよね。校舎内の階段で上からみぞれを覗くシーン、みぞれがちゃんと自分に付いて来ているか（＝籠の鳥が逃げていないか）確認する為に振り向いただけです。希美本人はまだ気づいていないのですが、みぞれに対する利己的な愛＝みぞれを*愛玩*しているだけなんです。 （実はこの時、みぞれもまた、希美を逃がしたくないと思っている＝*愛玩*しているだけなので、希美が青い羽根＝新しい興味を見つけた時、希美がまた何処かに行ってしまわないか不安になって、髪を触ります。・・・もっともここは、これから起きるであろう物語の予兆を与えるシーンでもあるのですが。） 一方、映画終盤の下校シーン、外の階段で希美が先に降りて立ち止まり、振り向いてみぞれを見上げる（！）シーン、ここでの会話は、コンクールの準備の会話の様でいて、実は二人の才能の差異（階段での上下の位置関係がそれを表しています）に起因するお互いの心の持ち様について会話していますよね。 希美は「私... みぞれのソロ完璧に支えるから」＝みぞれの才能に嫉妬していた自分を乗り越え、みぞれの才能を支える存在になって見せる！だからみぞれは才能の限り高く羽ばたけ！と（でも「今はちょっと待ってて」＝嫉妬深い自分をすぐには乗り越えられない、それにはまだ暫く時間が掛かる、と）。この希美の宣言を受けて、みぞれもまた、「私も... 私もオーボエ続ける」＝希美の決断に答えて、才能の限りを尽くし希美から遠く高き空に羽ばたきながらも、希美のことを思い続けてさえずるが如く、オーボエを続ける、と答えた訳です。 そして、平地でのハッピーアイスクリームの会話（※ 部員の会話からみぞれが仕入れたネタです。以前と違い、希美は希美以外を見るみぞれを受け入れています。）などして、その後、平地で*初めて*希美がみぞれに振り向くのです。 映画冒頭のように常に上から籠の鳥に接するのでもなく、また先の階段での会話のように才能の差異に基づきみぞれを見上げて会話するのでもなく、平地で＝対等な人間同士の関係において、心と心の関係において、希美が*初めて*みぞれに振り向いたのです。 「物語は、ハッピーエンドがいいよ！」その実現へ向けた希美の第一歩が、このラストシーンでの振り向きですね。

（上の書込の補足です） ラストシーンをコマ送りで見るとよく分かりますが、希美が振り向いていく途中の希美の横顔、口元に笑みを浮かべながらも、その口はしっかりと閉じています。しかしその段階で既にみぞれの表情がどんどん驚きの表情に変わって行き、希美がみぞれに向いてこちらから希美の顔が見えなくなった瞬間に、みぞれの驚きの表情はピークに達します。 つまり、みぞれは、希美が振り向いて何か言ったことに驚いたのではなく、希美が振り向いたこと自体に驚いた、と分かるようにしっかりと絵が作り込まれているんですね。

⁠​⁠​⁠@@N.G.Gonbei そう考えてもう一度映画を観るとすごい綺麗な終わりですね。 自分は最後に言いそうなことの心当たりがあったのでそれか、それ以外だとしても前向きな言葉を言っていてハッピーエンドなんだと思いました。 けどあなた言うように振り向くことに着目したら、映画内で完全に終わっていて、明らかなハッピーエンドです。 山田監督の考えは分かりませんけど、この見方は美しくて好きです

@@user-kq8oq9yy3d 「響け！ユーフォニウム」もそうですが、こちらの「リズと青い鳥」でも徹底的に比喩的表現をちりばめていますから、上記の内容を意図したものだろうと解釈しています。 なお、山田監督は、最初は、生物室のシーンを原作に近いものにするべきか悩んでいたらしく、今は亡きキャラクターデザインの西尾さんに絵コンテを見せたところ、渋い顔をされてしまったということで、それで大好きのハグの後に希美が笑うシーン（ホントは泣いている）を入れて、全体を少し直されたということです。 「物語はハッピーエンドがいいよ」とこの終り方は、恐らくは、そこから生まれたものと推察されます。