私は若い時からヘソ曲がりな性格でして、東京辺りの権威主義的な伝統文化の評価を眉唾と思っていました。名古屋の盲人さんの伝承する地唄、平曲にはこれこそホンマもんやと敬意を払ってきました。また、京阪の地唄なら、神戸の菊茂検校の、当道音楽会での菊原初子さん達師匠がたにまじって、分厚い菊池流の箏爪て千代の鶯をお弾きになる姿に接してまるで彦根屏風の盲人さんやなと息をのみました。その菊茂検校に地唄「融」を録音していただきました。東京の人間国宝冨山清琴の大人しい、山のない演奏に比べなんと生き生きした、かの源融の陸奥塩竈を語る舞姿を彷彿とさせる演奏に感銘を深くしました。 菊茂先生はお弟子もろくにいない貧しいお暮らしで子弟を大学に進学させなあかんと奥様も遣り繰り苦しいお話もしていました 三味線の皮も張り替えままならず、たわんだ三味線で演奏されましたが人間国宝如何程かという気概をお持ちのの世に埋もれた名人でした 今でも小賢しい寸評には苦笑、苦笑です。皮肉が過ぎてゴメンなさい(笑)