今日は思い出の曲。『金と銀』を何回も聞いています。 私の初愛の人、平川幸栄さんとの思い出の曲『金と銀』。 品川区立伊藤中学の２年の時、私は平川さんと同級生になりました。『ヒラメ』というあだ名でしたが、彼女はそのあだ名を苦にすることもない、とてもかわいい女の子でした。ちなみに、中学１年生の時、私のマドンナはMさんでした。Mさんとは日比谷高校でも同級生になった。Mさんはフルートを弾く、すらっとした美人でした。でも、マドンナはマドンナです。私はいつも彼女を見つめて、恋心を燃やすだけでした。 中学２年のクラス替えで、沢山の女の子ご机を並べました。　数人の美女のうち、私は平川さんが一番、好きになりました。　彼女の当時の顔、その可愛い笑顔は私の心の中から永遠に消えません。 １学期の給食後の昼休みの時間に、数人で自分が好きな曲の話題になったとき、平川さんは、レハールの『金と銀』が大好きな曲だと言いました。小学校の４年の７月から６年の１１月まで父の仕事の関係で英国ロンドンで過ごした私は『金と銀』と言う名前の曲を知りませんでした。 『僕は知らないな。どんな曲？』と聞いたら、彼女はすぐにそのメロディーを歌ってくれました。メロディーを聞くと、確かに昔聞いたことがある曲でした。小さな声でしたが、とても美しい声でメロディを囀（さえず）りました。　私は彼女が歌い終わるまでうっとりといて聞いていました。 その後、中学２年の２学期に入ると私は他の男子学生と対立し、仲間外れにされ不登校になりました。担任の恩師西内きょう子（日が３つの漢字）が、何回か仲を取り持ってくれました。しかし、菓子屋の川島、坊主の家の本多、それに沼田などの徒党を組む連中、中間テスト、期末テストなどで平気でカンニングする連中、（回答を回すのを後ろで座っていた私は何回も目撃していた）との対立は解消しなかったのです。 『悪友の仲間に入るよりも孤立した方がましだ。』それが私の当時の信念だったのです。小学校６年のときにもいじめにあっていたので、私はいじめには慣れていました。しかも、彼らよりもいつも私はテストの点が良いのです。バカな連中と付き合う必要はなかったのです。西内先生は国語の先生で、伊藤中学で１年に入ったときも担任でした。漢字の知識がなく、書き順もでたらめだった私には赤ペンで直してくれました。また「コタンの口笛」や「鋼鉄はいかに鍛えられたか？」などを始め、『マクベス』や「リア王」「ベニスの商人」「子犬を連れた貴婦人」や「大尉の娘」などなど沢山の良い本、面白い本を紹介してくれました。　彼女の御蔭で、私は一人図書館で本を読むことが好きな読書少年になりました。 平川さんの思い出の話に戻りましょう。その後、私は都立日比谷に進学し、彼女は三田高校に進学しました。　進学後、すぐに私は彼女に恐る恐る葉書をだしました。葉書１枚が５円の時代のことです。　葉書が簡単な文通の手段だったのです。　葉書にしたのは、彼女の御両親が内容を読んで、彼女と私との交際を認めて欲しかったからです。 数日後に、彼女から返事がありました。私は飛び上がって喜びました。　その後、数回の葉書の往復がありましたが、なぜか次第に疎遠になってしまいました。なぜ年賀状位だけでも出さなかったのだろうか？ 高校時代の私は演劇部と図書委員会に所属し、『ひかりごけ』『人形の家』に出演し、さらに『エッフェル塔の花嫁・花婿』では、裏方をしていた私には葉書を出し続ける時間がなくなったからなのです。　また図書館で働いていた司書の女性Nさんから突然、の告白を受け、その人が好きになってしまったのです。　平川さんは彼女の方から私に葉書をくれなかったので、彼女は次第に私の心から消えていったのです 私は１９４９年生まれですので、今年h７４歳です。同じ年代の知人・友人がどんどんと亡くなっています。　中学時代の生活手帳などが出てきたこともあり、一昨年（２０２１年）になって、急に彼女とまた逢いたくなりました。三田高校に進学した女性に連絡したところ、『平川さんはすごく若い時にお亡くなりになりましたよ。どんな病気かは詳しく知らないけど、ガンだったそうよ。』とのこと。 晴天の霹靂（へきれき）で、私は数日間、泣きとおしました。なぜもっと早く連絡を取ろうとしなかったのか、と自分を責めましたし、ヒラメを置き去りにした自分の浮気心も責めました。ですから、いまでも、この音楽『金と銀』を聞くと、好きだったヒラメのことを思い出して泣きの涙の時間を過ごしています。彼女が歌ってくれた大好きな曲なのです。 何通かの彼女からの手紙は、彼女とのプラトニックな愛の交流の思い出となり、いまは私の貴重な宝物です。　時々、読み返しています。　私が死んだら、彼女の葉書は御棺に入れて貰いたい、と思っています。平川さん、君が早く死んだのは本当に残念です。知らなくて、ごめんね。許してね。 中学生、高校生の皆さん、好きな人ができたら、すぐに告白して、二人だけの思い出を育ててください。人生百年と言われる時代ですが、何年生きるかは運命なのです。 人生は長いようで、短いのです。あっと言う間のことなのです。『いーのち、みじーかしー、恋せよ、乙女』『恋を育て、二人の思い出を育てよ、少年少女よ。青年よ！』なのです。　 昨年の話。品川区大井林町にあった平川幸栄さんの家に立ち寄って見ました。　驚いたことに、あの広い家が無くなり、更地となっていました。　家を売却して、どこかに引っ越されたのでしょう。　　もし高校・大学時代の平川幸栄さんのことや彼女の死について、御存じの方が居られましたら、是非とも、susumu.kudo@gmail.com宛にメールで連絡ください。　彼女の御両親はお亡くなりになっているでしょうが、もし御親戚が生きているのでしたら、お会いして御詫びしたいと思います。　私のヒラメ、平川’幸栄さんを思い出して、私は毎日、合掌しています。