This Story is from Rakugo.
Rakugo is a Japanese traditional comic storytelling.
This play, "The White Lion," was written by Katsura Bun-nosuke II and translated into English by Katsura Shijaku II (1939-1999).
If you search for him on KZfaq, you'll see Shijaku's amazing performance.
落語『動物園/White Lion』を #やさしい日本語 #EasyJapanese #SimpleJapanese にリライトしました。
主人公の名前「鈴木」は、外国人に分かりやすい名前として選びました。全国の鈴木さん、すみません。
【音楽】
「どろぼう猫」／作（編）曲 ： 田中芳典 • どろぼう猫 @ フリーBGM DOVA-SY...
【イラスト・写真】
www.irasutoya.com/
stock.adobe.com/jp/
www.ac-illust.com/
スクリプト（動画の字幕と完全に一致するものではありません）－－－－－－－－－－
「あのう…、仕事を辞めましたから、また紹介してください」
ハローワークに、鈴木さんが来ました。職員は、「またか」と思いました。今まで３つ鈴木さんに仕事を紹介しましたが、鈴木さんはすぐ辞めます。一つ目の仕事はプログラマーでした。鈴木さんは「頭を使う仕事は無理です」と言って辞めました。二つ目の仕事はセールスでした。「人と話す仕事は向いていない」と言って辞めました。三つ目の仕事は運送業でした。鈴木さんは「体力を使う仕事は疲れます」と言って辞めました。
「今度は何がダメでしたか」
職員が聞きくと、鈴木さんは言いました。
「朝が早い。私は朝早く起きることができません」
職員はため息をつきました。
「じゃあ鈴木さん、あなたができる仕事は、どんな仕事ですか」
「そうですね。頭を使わない、人と話さない、疲れない、朝早くない仕事です。あ、それから、給料がいい仕事。紹介してください。お願いします」
「そんな仕事、ありませ…あ、ありますよ。あなたにちょうどいい仕事があります」
職員は、ニヤニヤ笑って鈴木さんを見ました。鈴木さんは喜びました。
「本当ですか。すぐ紹介してください」
職員は住所を書いて、紹介状も渡しました。
「この会社の、小佐田さんに会ってください」
「わかりました。ありがとうございます」
鈴木さんはすぐ、その会社へ行きました。
そこは、動物園でした。
「私が小佐田です。園長です」
「はじめまして、鈴木です。あのう、頭を使わない、人と話さない、疲れない、朝早く起きなくてもいい、給料がいい仕事があると聞きました」
鈴木さんが言うと、小佐田さんは笑いました。
「はい、あります。あなたにちょうどいい仕事ですよ。虎です」
「虎？」
「そうです。先週この動物園の虎が死にました。あなたは、新しい虎になってください」
「え？　無理です。私は虎になったことがありません」
「大丈夫です。経験は問いません」
「いや、でも、私は体力がありません」
「体力は要りません。檻の中で歩くだけです」
「でも、私は人と話すことが下手で…」
「虎は人と話しません」
「でも、私は頭が悪いですから…」
「頭がいい人は、虎になることはできませんよ」
「私は朝早く起きることが…」
「朝は11時から、夕方は５時まで。給料は１日15,000円」
「15,000円？！　やります！」
小佐田さんは、虎の皮を鈴木さんに渡しました。鈴木さんは、虎の皮を着て、鏡を見ました。本物の虎に見えました。
「すごい。かっこいい」
「ちょっとちょっと、鈴木さん、二本足で歩かないでください。虎は四本足ですよ」
「えっ？　あ、はい。こうですか」
「こうです」
小佐田さんは、両手両足を使って虎の歩き方を教えました。
「小佐田さん、上手ですね！」
「さあ鈴木さん、はやく檻に入ってください。もうすぐ子どもたちが来ますよ」
鈴木さんが虎の檻に入ると、小佐田さんは外から鍵を掛けました。
「え？　私は逃げませんよ」
「鍵を掛けなかったら、子どもたちが怖がりますからね」
やがて、虎の檻の前にたくさんお客さんが来ました。鈴木さんが虎の真似をして子どもたちに近づくと、子どもたちは怖がって逃げました。鈴木さんは、だんだん面白くなりました。
隣の檻を見ると、白いライオンがいます。
「珍しい。白いライオン、かっこいい。でも、本物のライオンは怖いな」
その時、動物園の職員がマイクで言いました。
「みなさん、今から猛獣ショーを始めます。ここに、白いライオンと、虎がいます。ライオンと虎と、どちらが強いですか。ライオンと虎の間に、ほら、ドアがありますね。あのドアを開けたら、どうなりますか。さあ、ご覧ください！」
「えっ？！」鈴木さんはびっくりしました。「このドアを開ける？　話が違います。檻の中で歩くだけでしょう？　ライオンがこちらへ来たら、私は死にます。ちょっと、小佐田さん、小佐田さん！」
鈴木さんは檻の入口を叩きました。しかし、外から鍵を掛けていますから、開けることができません。
「小佐田さん！　助けて！」
ドアが開いて、白いライオンが虎の檻にゆっくり入って来ました。
「小佐田さん！」
ライオンが鈴木さんに、ゆっくり近づいて、ささやきました。
「鈴木さん、私です。小佐田です」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおわり