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折原です。今は怪奇小説を書いています。
ものおきを模様替えした本を読むための部屋と、こじんまりした屋根裏書斎をご紹介します。
窓がない部屋で読書なんて、という方もいらっしゃるかもしれませんが、僕は薄暗く、閉じ込められた感覚のあるこの部屋がものすごく落ち着きます。
せっかく文字の掲載が許されている概要欄ですので、動画内でちょこっと喋っている【田舎町を舞台にした怪奇小説】の冒頭をほんの少しだけ載せておきます。このまま行くかどうかは不明、変更の可能性高めですが、ご興味のある方は読んでみてください↓↓↓
『響』 折原圭
1.踊る生臭坊主
踊る生臭坊主がいる。
家の中で虫を見かけたら、あ、いる、と思う。そんな感じで、視界の中央に踊る生臭坊主がいる。あ、いる、と思う。どうしよう、と一瞬思う。飛蚊症を疑う。目の中のゴミのような坊主。見た目の話だけじゃなくて、存在のどうでも良さがゴミのよう。ただ坊主はゴミでも目の病でもなく確かに命としてそこにいる。急にクローズアップ。熊のように太っている。頭は剃り跡で青く、濃い無精髭が顔の下半分、どころか、下って、下って、首まで生い茂っているのが汚らしい。頭部の上下が反対についているのではないかと思う。私はこいつといるのが苦痛だった。家の中に虫がいるときのような不快。あ、いる。ただ存在するだけで日常に身の置き所がなくなりそうになる不安。あの小さな黒いシミたった一つなければ、私の日常は日常のままだったのに、という憤り。存在を知れば最後、無視することができず、どんどん存在感が高まっていく。額から粘度の高そうな汗を噴き、強く食いしばっている口元には唾が溜まっている。何を必死に舞い上がっているのか。何を阿呆みたいに踊り狂っているのか。私は知っているようで知らないし、知らないようで知っている。