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今、流行(ハヤリ)の地方発ドラマを想わせる映画『万年筆』は、富山の氷見漁港をフレーム・ワークとして、何やらイワクありげなクタビレタ中年男女の出逢いから始まります。ただ、そのフレームである自然の宝石箱のような富山の山海も第二の主人公に見えました。この純朴な湊町の風光が、ぎこちない中学生のような二人の恋(？)を優しく受け止めています。二人は、女岩(めいわ)を望む雨晴(あまはらし)駅の改札口で初めて出逢いますが、何かに誘われるように女に声をかけ、女も、つっけんどんではあるものの、「赤いスポーツカーでなら」と、男の誘いを受け入れます。この赤のスポーツカーは、遥か昔の二人の失われた青春を象徴したものかもしれません。そして、二人は、20年来の旧友でもあるかのように、ぎこちなくも親密な短い旅を共有します。男にとっては、地獄で“天使”に逢った想いだったのかもしれません。男は、未だに「万年筆」で脚本を書く売れないライター(作家)で、喧嘩の仲裁に入ったことから偶然に人を殺めることになり、目下、指名手配中の男です。女は、海外赴任する夫に、義母の介護を10年間も押しつけられ、疲れはてているのですが、医師の勧めで疲れを癒すために暫(しば)しの旅に出たようです。この二人は、(背景の古風な町や人々と同様に)何処か、気持ちを素直に表せず、ハジケ切らずギコチナイ古風で不器用な(しかし、味のある)『万年筆』を象徴するようなキャラとして描かれています。二人の、ギコチナくも切ない距離を保ちつつ、互いの気持ち(恋心)をクロスさせることなく、永遠に重ね合うことのない平行線のまま淡々と進むストーリーには、身につまされる想いもして、いつしか、自分の人生とシンクロするような気配も感じられます。二人は、お酒、食事、買い物、遊覧観光にと、与えられた(残された)時間を慈(いつく)しむように楽しみますが、時間は淡雪のように消えて逝きます。フト想い返すと、『万年筆』の懐かしい姿が、人生の節々のカットにフラッシュ・バックして見え隠れして現れ、それは、この主人公二人の生き方を投影すると同時に、それを見る側にも、『万年筆』のように古風・不器用で今風ではないかもしれないけれど、「味のある」そんな生き方もあっていいのでは、というメッセージが伝わってきます。男は、逃亡中であるにも拘らず、ホテルのチェックインでの記帳では、『万年筆』で“本名”を記入しました。それは、逃亡の意思はないことを暗示するものですが、同時にこの不器用な{筆}が命ずるものでもありました。死に場所を探していたこの不器用な男は、雨晴駅で女に「天使の微笑み」を感じ取って、生きる希望を見出します。男の“分身”でもある『万年筆』は女の手に渡され、男は刑事に逮捕されてこの短い旅は幕となります。ラストシーンでの「アリガトウ」の言葉を優しく包み込み、それを遠くで見守るのはアノ美しい富山湾でした。

やっぱりそうですよね！ 知ってる方いて何か嬉しい

え〜、いいシーンなのに。男女の仲には前置きは要らない、歳食ったらネ