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フランクルの『夜と霧』は、著者が体験した壮絶なアウシュビッツ収容所での生活が綴られ、読む人を圧倒します。
食事は日に一回与えられる水としかいえないようなスープ、人をバカにしたようなちっぽけなパン、それに「おまけ」は日によって違い、二十グラムのマーガリンだったり、粗悪なソーセージ一切れだったり、チーズのかけらだったりする、それでいて極寒の野外での重労働を課せられ、栄養失調でバタバタと倒れていく、室内の天井からつららがぶら下がる火の気のない収容棟で寝起きし、働けなくなるとガス室に送られる、気が狂う者も続出する、そんな言語を絶するような収容所生活の日常を、心理学者であるフランクルが、自身や周りの収容者の心理分析をしながら語っていく内容です。
それでも少数の人が生き延びることができたのはどうしてだったのか。
それは「いつか解放されて家に帰れる」という未来への希望でした。
収容所である年、クリスマスから新年の間、かつてない大量の死者を出したことがありました。
労働条件、食糧事情、気候の変化、伝染病などは例年と変わることもないのになぜ大量死したのか、管理するドイツ兵は原因がわからず首をかしげましたが、収容されていた者たちは全員その原因をよく知っていました。
それは「生きる明かりを失ったから」だったのです。
なぜかその年の夏頃から収容者たちの間で「クリスマスに家に帰れる」といううわさが流れました。
信憑性のないただの噂がいつしか彼らの生きる明かりになっていき、重労働のあと、収容棟で交わされる囚人の会話は、解放されたらどうするか、の話ばかりとなり、合い言葉は「クリスマスまで死ぬな」となっていきました。
ところがクリスマスがやってきて、過ぎ去っても、何らいつもと変わらぬ重労働の日々、収容所は何も変わらない。
彼らは噂がデマであったことを知ってしまい、落胆と失望で生きる気力を失い、バタバタと倒れていったのです。
このエピソードは、人間がいかに『希望』を生きる力としているかを示しています。
スープも毛布も生きる力に違いないですが、それ以上に『希望』こそ大切なのです。
どんな劣悪な環境でも(こんな収容所であっても)未来に希望があれば、苦難に立ち向かって生きる力がわいてきますが、人生行路の行く手に明かりがなくなると、とても耐えられなくなってしまいます。
どうしても人間には生きる明かりが必要なのです。
今日の日本でも、青少年の自殺が年々増加しています。
大人は「そんなバカなことを考えずに、前向きな気持ちを持って」「きっと乗り越えられるよ」と励ましますが、自殺願望の若者の心に響くものではないようです。
彼らには「生きろ」という言葉が「もっと苦しみ続けろ」と言われてるようにしか思えず、心を閉ざすのでしょう。
本当に伝えなければならないのは、彼らがうなずけるに値する、確固たる生きる希望です。
それはいったい何でしょうか。
引きこもりの中高年が引き起こした事件も多発しています。
70万人とも80万人とも言われるこれらの人たちに示すべき将来の希望は何でしょうか。
末期ガンで闘病生活を続ける人にとって、未来への明かりは何でしょうか。
人類はどんな事態に陥っても色あせることも薄れることもない真の希望を希求しています。
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(自己紹介)
1988年早稲田大学を中退し、仏教講師の道を目指す。
浄土真宗親鸞会で仏教講師の資格を取得、全国各地で公開講座を始める。
2010年からメールマガジンをはじめ、読者12000人の仏教最大級のメルマガ執筆
2014年からは全国をつなぐオンライン講座の動画レクチャーでも活動中。
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