このシルバーコンパスもまた、前掲のリサイクルショップで見つけたもの。数週間後に訪問した時に、「子供のオモチャ、どれでも一つ○拾円」と貼ってあるダンボール箱を覗き込んだら、この二つが有りました。余りにも安くて驚愕して買い込みました。50円玉を出してお釣りがきた！
青い回転ベゼルのものは、よくある品。もう一つの金属の回転ベゼルの物が、なかなかに重厚感があります。何かのマークが刻まれていますが、よく見るとボーイスカウトの紋章であり、微小な文字ながらも「そなえよつねに」のモットーが読み取れます。このモットーが日本語であることから、ボーイスカウト日本連盟がSWEDENのSILVA社に大量注文して製作させたものと思われます。昭和50年代以前はまだまだ、こんなハイカラなものは地方では入手困難でした。本部が大量に購入して、隊員に購入させたのではないか？と推定します。
この製品は、昭和30〜40年代のものと思われます。オイルが注入されていない初期のモデルです。針がやけにカタカタすると思ったら、オイルが入っていませんでした。昭和52年頃？だったかに、小生が購入した歩数カウンター付きのシルバーコンパスはご覧の通り、オイルが封入されていますから、それ以前のものと思われます。この歩数カウンター付きのものは気泡が発生していて、その頃はまだ気泡を針の頭のところに完全に密封する技術が確立されていなかったのでしょう。現在のコンパスは、何処のメーカーの物でも、もはや気泡が発生する事は有りません。4番目のコンパスは雑誌「BE-PAL」の付録品ですが、逆さにしても振っても気泡が発生する事は有りません。
このオイルの封入されていないコンパスの中を見ると「INDUCTION DAMPING 」とあります。揺れ減衰機構くらいの意味ですが、何のことはない、ヤジロベエの頭にある銀色のコマ、重りの事です。そしてもう一つ気にいったのは、「 RED END OF NEEDLE NORTH 」と記されている事です。 極限状態でもないですけれど、長い山行ルートで１日10時間も歩けば血糖値が下がるのか、極端に判断力が低下します。あれ、北を指しているのは、赤い針だったけ？ 白い針だったけ？となります。それを防止する意味で、セフティ機構です。
また、回転する金属ベゼルが下部にふくらんでプレートの進行線と直に接して読み取りやすいのも、高得点です。角度１度の読み誤りが１㎞先では約17メートルにもなるそうです。( → そのような意味では、回転ベゼルの直径を大きくして、最小の目盛り単位を１度から0.5度目盛りにすれば、より精密な方角が取れるかもしれません。ただ、地図の精密度との兼ね合いもありますが )
最後に、このTYP5モデルを特徴づけるものとしては、裏の「ミルスペック」の、軍で使われる全周400度目盛りです。換算表になっていて、例えば90度はミルスペックでは100度だと、計算しなくても回転するベゼルの裏側の指示線を見れば読み取れます。
青い回転ベゼルのコンパスのほうは、今様のものですから、説明を省きます。
最近はヤマたんなどのアプリがあって、そちらの方が主流のようです。
地図とコンパスは登山の必需品でした。地図から進むべき方向を割り出して、現実に進むべき方向を教えてくれます。 もし、仮にこの世の中に、時間とか空間とかの要素を読み込んで進むべき道を示す「多次元コンパス」という物が存在していたら、それはどんな物だろう？ この時間にこの地点に行け！というシロモノですから、それは文字通り「人生コンパス」です。
人生の途上にて、迷った時に行くべき方向を示してくれるコンパスがあれば、小生の人生も何度か難路にぶち当たる事無く、平坦な道を歩けていたでしょう。
最近、注目したのは、マイクロソフト社から生成AI搭載のパソコンが発売されるニュースです。未だ支援ソフトの領域にあると思われますが、回路のより超高密度化、メモリーの超密度化等が進めば、将来的にはネット環境から自律して学習し、分析して使用者に最適解を与えてくれる副次脳、個人の副人格となりうるかも知れません。営業に於いても、自分のAIが取引先のAIと交渉して最適の契約案を提示する未来もありうるかも知れません。高次脳機能障害者にとっても、第2の脳、行動や判断をサポートしてくれる人工知能として活躍してくれる可能性もあります。大学入試などについても、もはや自分の知力というよりも、子供の頃から与えられた個人AIが、どれほどの知識を収集し分析するのか、そのAIの個性や優秀性にかかってくるかも知れません。それはもう、自分の判断を補完してくれる人生コンパスにほかなりません。
私の時間は、その未来に届く事はありませんが、その未来を少しだけ、垣間見た気がします。
「 かの時に我がとらざりし分去れの片への道は
いづこ行きけむ 」
美智子上皇后様 のお歌