三之助「今日もご覧いただきましてありがとうございます。噺家の柳家三之助でございます。今日は、私は天王洲のまちに来ておりますが。今、この天王洲はですね、アートでまちを活性化しようという取り組みが行われているそうなんですね。それでね、ここの後ろっすよ、これもそのアート作品の一つなんだそうで。大きいですよね。これも、天王洲のまちの活気あるイメージを現した作品ということなんですよね。大きい作品はこればっかりじゃないんですよ。こっちご覧ください。これもその作品の一つで、これは立体駐車場の壁面に描かれているってことで。あちらはとにかく縦に長い。そしてこちらはとにかく横に広い、という。こういった壁面をキャンバスに見立てて描くアートのことを「ミューラルアート」と言うそうなんですね。実はどちらの作品も、アートでまちを盛り上げようとするプロジェクト「天王洲アートフェスティバル」で生まれた作品なんです。どんな取り組みなのか、さっそくお話をうかがってみたいと思います」
｢天王洲アートフェスティバル｣は水辺とアートの相乗効果で魅力あるまちを生み出そうと２０１９年から毎年開催されています
主催をするのは、天王洲・キャナルサイド活性化協会。
「天王洲キャナルフェス」を開催するなど水辺をいかした取り組みで、天王洲のまちの賑わいを創出しています。
早速お話を伺ってみましょう。
三之助「この「ミューラルアート」っていうものを天王洲へ導入するっていうのは、何か理由があったんですか」
和田本「やはり、水辺にまず映えるものであってほしいというのがひとつと。で、天王洲アイルの歴史として、この辺りはもともと倉庫街とか、工場街だったということで、そういった建物が残ってるとどうしても大きな壁というものがまちの中にぽつぽつありまして。それを活かしたアートということで、ミューラルというところに行き着きました」
三之助「なるほどね。キャンバスがすでにもうあるっていう、そういうことですよね」
和田本「最初の頃はですね、まず壁を貸していただく方を探すのも大変だったので」
三之助「そうですよね。勝手に描いたら怒られますもんね」
和田本「やっと、大分浸透してきてですね。良いよ描いてって言っていただける方も大分増えてきまして。そういったこともあって、公募ができるだろうということで、今年初めて公募に踏み切ったんです」
三之助「良いですね。少しずつ定着していると。なるほど」
今年の「天王洲アートフェスティバル」の新作は１２作品。
そのうち８作品が、公募で選ばれました。
今回多くの作品が描かれたのは ｢アイルしながわ」。
旧東品川清掃作業所の壁面です。
おもにパラスポーツのイベントやアート活動の拠点として活用される「アイルしながわ」は、品川区から委託を受け、キャナルサイド活性化協会が運営しています。
三之助「もう全然違う絵ですよね」
和田本「やっぱりアートと一言で言っても、これだけ表現に違いがあるっていうのが、ここに来て見ていただくことができるかなと思ってます」
三之助「のっぺりとした空間じゃないですか。もうスタジオみたいですよね。だから、使いようによってはこれからいろんなアイデアを投入して、いろんなふうに使えるってことですよね」
和田本「そうですね。演劇とかですね、そういうのもアートの一つだと思ってますので。伝統文化とかですね、こういったこともこの場所を通じてこれから発信ができるとすごくいい場所になるんじゃないかなと思ってますけれども」
三之助「いいですね、楽しみですね」
公募で選ばれたアーティストのお一人、佐藤周作(しゅうさく)さん。
普段は、動物をモチーフに、墨絵を描いている佐藤さんは今回、およそ２週間かけて、
大きな水牛の壁画を完成させました。
三之助「壁に絵を描くっていうことになって、どうして水牛を選んだんですか」
佐藤「自分は、天王洲って名前の由来を調べて、牛頭天王っていう…牛の頭の面が川から流れ着いた土地だから、天王洲という名前になったみたいな由来があって。その牛のモチーフから、水辺に生息する牛っていうことで水牛をモチーフに。自分自身がアフリカに3年前に行って、実際に野生の水牛を見てきたので、そのモチーフをうまくリンクさせて描いたっていう感じです」
三之助「すなわちこれが天王洲ってことなんですね」
佐藤「はい。ちょっと、街並みのシルエットっていうかイメージも描きつつ。これがビル群っていうか」
三之助「なるほど」
佐藤「普段生活している中で、アートに触れることってなかなか…自分から進んでいかないとないと思うんです。こういうパブリックな場所で実物をちゃんと見れるっていうのはすごくいい機会だなって自分は思って、今回応募した感じですね」
三之助「いろんな人に見てほしいし、また実際ここはいろんな人が来るので、思いがけない人が鑑賞してくれるっていう」
佐藤「動物もそうです。実際に見に行かないと会えないのが、自分の作品とリンクして。実際に会いに来てほしい作品にしたいなと思ってこういうふうにしてます」
三之助「面白いですね、これはね」
三之助「今日はもうお一方、ご紹介する方がいらっしゃいますよ。この番組はですね、すでにご出演なさってるんで、まあもう準レギュラーですな。品川ゆかりのアーティストでございます、フカザワユリコさんでございます。どうもご無沙汰しております」
フカザワ「ご無沙汰しております」
三之助「今回ね、フカザワさんね、この天王洲アートフェスティバルに応募なすってね、それで最優秀賞を獲っちゃったんですって？」
フカザワ「はい。頂いてしまいました」
三之助「すごいですねえ。これは公募だから、品川区以外の方もたくさん応募されてるんだと思うんですけど。その中で、地元ということでね、嬉しいなあって。私も聞いてびっくりしたんですけど」
フカザワ「ありがとうございます」
三之助「今回は、どういう作品で賞を獲られたんですか」
フカザワ「今回は、ダストボックスを5点、それに描きました」
三之助「なるほど。ということで、さっそくですね、ここに実はそのダストボックスがあるのでございます。じゃじゃーん、なんつってね。これだ。もうね、見ただけでフカザワさんのだなっていうのが…これはね、分かりますよ。これ結構大変だったってね。真夏ですもんね」
フカザワ「真夏でしたね」
三之助「真夏で、実際にここで作業をしてたんでしょ？」
フカザワ「ここで作業してました」
三之助「けっこう往来もありますしね、昼になるとみんなお弁当食べたりね、憩ってるじゃないですか」
フカザワ「憩ってるんですよ」
三之助「そこで一所懸命やってたわけですよね」
フカザワ「地べたに座って。制作中は何回か整骨院に行って、腰を整えて」
三之助「ああ、低いからね。これ、なんとかならなかったんですか、どっか持っていってやるとか」
フカザワ「後で気づきましたね。そういう方法があるのかなって」
三之助「フカザワさんの作品はまちの中に溶け込むものが多い。たとえば商店まちのキャラクターだったり。これもこれから、天王洲のこの場所でですね、だんだん溶け込んでいくんだろうなっていう。まちと同化していくっていうか」
フカザワ「私自身も、バーッとこれだけが突発的に目立つというよりは、ここにいるよ、みたいな、日常に溶け込むスタイルっていうのはもともと私の中にあるかもしれないですね」
三之助「ここは天王洲でフカザワさんも品川の方ですから。そうやって地元に創作品を残していけるというのも普段とは意味合いが違うと思うんですけれども」
フカザワ「はい、本当にうれしくて、天王洲アイルに置けることが」
三之助「今日はいろいろ、ご紹介して参りました、まだまだね、紹介しきれていない部分もありますし。きっとこの天王洲はまだアートの入る隙間がたくさんあると思いますんで」
和田本「そうですね」
三之助「これからのどういった天王洲の景色をお考えになっているか、お話しいただけますか」
和田本「今やっとアートが全体にちりばめられたかなというレベルになってきましたので。もう少し、どこを見てもアートがあるという空間にしていくのが我々の夢というか、目標になっておりまして。それを見にたくさんの観光客とか、いろんな方がこのまちを訪れていただくことを夢見て取り組んでいます」
三之助「こちらの天王洲のマップというのが、アートマップですね、こちらがネットからダウンロードできるようになっていまして。こちらをご覧になりながらこの天王洲のまちを皆さんに歩いていただけたらいいんじゃないかなと私思っております。ぜひ、散策してみられてはいかがでしょうか。さて、次回のとっておきの品川、どうぞお楽しみに」