統合失調症は軽症化したのでしょうか？臨床をしている人の多くが「統合失調症の軽症化」を実感している話を聞きます。背景としては、啓蒙を背景とした「未治療期間」の短縮や、抗精神病薬の改善による副作用の減少などがあります。
ご質問「統合失調症は軽症化しましたか？」について、精神科医が7分で回答しています。
出演：春日雄一郎（精神科医、医療法人社団Heart　Station理事長）
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↓↓内容の詳細は下記になります。
はじめに
統合失調症は、悪化したときに幻聴や妄想などが目立つ脳の不調であり、脳内のドーパミンという物質の働きの過剰が主な背景とされています。治療と再発予防のために、脳の状態を整える抗精神病薬を安定しても続けていくことが大事とされています。
統合失調症の主な症状
統合失調症の主な症状は以下の3つに分類されます。
陽性症状：幻聴や妄想など、脳が非常に過敏になったときに出る症状
陰性症状：意欲が出なくなったり、感情が起きにくくなるなど、生活に影響が強い症状
認知機能障害：考える力が低下してしまう、同じく生活に影響が強く出る症状
統合失調症の重症例
統合失調症が重症と言われる例としては、以下のようなケースがあります。
陽性症状が強く続き、生活に影響してしまう場合
陰性症状等が強く続き、引きこもりが続いたり、日常生活も困難になってしまう場合
薬をやめてしまい、再発と混乱を繰り返し、症状がさらに悪化してしまう場合
統合失調症の軽症化
最近は以前より統合失調症が軽症になった印象があります。軽症化の例としては以下のようなものがあげられます。
陽性症状が治療後はあまり目立たなくなるケースが多くなっている
陰性症状等はあるものの限られていて、生活は行うことができるケースがある
治療を続けることで、再入院はあっても大崩れはないケースがある
軽症化の結果
統合失調症の軽症化により、以下のような結果が見られるようになりました。
入院の反復が少なくなり、入院期間が短くなった
安定した生活ができるようになり、再入院が減った
障害者雇用やリハビリとしての就労移行支援など、社会復帰も目指せるようになった
軽症化の背景
統合失調症が軽症化した背景には、複合的な要素がありますが、鍵となるのは「未治療期間」の短縮です。軽症化の背景とされる主な要素は以下の3つです。
未治療期間の短縮
薬物療法の改善
社会的サポートの改善
これらの要素は互いに連動し合っています。
未治療期間短縮の背景
未治療期間短縮の背景としては、以下のような点があげられます。
疾患や早期治療の啓蒙により、早く治療することの重要性が広く知られるようになった
疾患への偏見が減少し、治療につながりやすくなった
治療後の社会復帰などの可能性が見えてきたことで、治療の意味づけが改善した
薬物療法と社会的サポートの改善
薬物療法に関しては、副作用が少ない抗精神病薬が使えるようになり、多くの場合、副作用が少なく治療できるようになりました。また、未治療期間が短くなったことで、症状が軽い段階で少ない薬でも改善しやすくなっています。
社会的サポートに関しては、入院の短縮化に伴い、家でのサポートや訪問看護などの社会資源が充実してきました。また、通所リハビリや就労移行支援など、社会復帰の枠組みも増えてきました。
残された課題
統合失調症は軽症化してきましたが、まだ以下のような課題が残されています。
偏見がまだ一部で残っており、治療につながりにくいケースがある
長期入院後など、生活能力が厳しい場合の在宅サポートの課題
仕事や社会での偏見がまだ残っており、ストレスの問題がある
まとめ
統合失調症は今もなお強い症状と生活への影響が残る病気ではありますが、以前と比べると軽症化したことが指摘されています。その一番の背景は「未治療期間の短縮」であり、疾患の啓蒙や社会復帰の道筋ができてきたことなどが、未治療期間の短縮の土台になっています。一方で、重症者のサポートや社会生活での偏見の問題など、まだ残されている課題もあり、これらは今後の課題となっています。
こころ診療所グループ（医療法人社団Heart　Station）
府中こころ診療所（東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887)
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#統合失調症　#未治療期間　#抗精神病薬 　#早期発見 　#精神科医　
【監修者】
医療法人社団Heart　Station　理事長　府中こころ診療所院長　春日雄一郎
精神科医（精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医）
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。