0:00（１）はじめに
0:24 （２）統合失調症では「治癒」は困難
2:52 （３）統合失調症の治療目標4つ
3:00 ①症状改善
4:25 ②生活能力の確保
5:49 ③再発予防
7:08 ④リカバリー
8:23 （４）まとめ
統合失調症は薬をやめると強い再燃をするリスクが高いため安定後も服薬継続が必要のため、薬なしの「治癒」は困難で薬を使っての安定「寛解」が目標になります。それでもなおできることは多くあり、障害があっても自分の人生を生きる「リカバリー」が目標になります。
「統合失調症の治療目標4つ」について、精神科医が9分で説明しています。
出演：春日雄一郎（精神科医、医療法人社団Heart　Station理事長）
こころ診療所吉祥寺駅前　kokoro-kichijoji.com
府中こころ診療所　fuchu-kokoro.com
チャンネル登録お願いします　 / こころ診療所チャンネル
↓↓内容の詳細は下記になります。
（１）はじめに
統合失調症は再発予防のためにも薬が必要な精神疾患です。そのため、薬なしでの治癒は望みにくい面がありますが、それでもなおできることは決して少なくありません。本記事では、統合失調症の治療目標4つについて詳しく解説していきます。
（２）統合失調症では「治癒」は困難
統合失調症は、悪化したときに幻聴や妄想などの陽性症状が目立つ脳の不調です。脳内のドーパミンの働きの過剰が主な背景とされています。治療と再発予防のために、脳の状態を整える抗精神病薬を継続的に服用する必要があります。
統合失調症の主な症状は以下の通りです：
1. 陽性症状：幻聴や妄想など、脳が敏感になることで生じる急性期に多い症状
2. 陰性症状：意欲低下や対人関係の回避など、生活に影響する安定期に出やすい症状
3. 認知機能障害：思考力の低下など、安定を目指す症状
主な治療法としては、以下が挙げられます：
1. 薬物療法：主に抗精神病薬を継続的に服用し、症状改善と再発予防を図る
2. 精神科リハビリ：日中の活動を徐々に増やし、生活リズムや活動を回復する
3. 福祉資源の活用：治療後も残った障害を補うため、必要な支援を検討する
統合失調症の病期は4段階に分けられます：
1. 前駆期：不調の前触れの時期
2. 急性期：不調と混乱が強い敏感な時期で、入院が必要な場合もある
3. 休養期：精神状態は安定するが、陰性症状が目立ち生活が困難な時期
4. 回復期：一定の改善が見られ、再発予防と社会復帰を図る時期
ここで、「寛解」と「治癒」の違いを理解することが重要です。「寛解」は薬を続けながら症状が目立たなくなる状態を指し、「治癒」は薬がなくても安定が続く状態を指します。統合失調症では、安定後も再発を防ぐために薬を継続する必要があるため、「治癒」は困難で「寛解」が目標となります。
（３）統合失調症の治療目標4つ
統合失調症の治療では、病気を抱えつつも受け入れながら前に進むことが大切です。以下に4つの主要な治療目標を詳しく説明します。
①症状改善
症状改善の目標は以下の通りです：
- 望ましいのは寛解状態を達成すること
- 症状が残っても対策をとること
早期に治療を開始し、継続することで幻聴などの陽性症状の改善が期待できます。少なくとも、急性期の強い症状は治療によって改善されます。症状の残存には個人差がありますが、早期治療と治療継続が重要な対策となります。
寛解状態では、服薬を続けながら症状が目立たなくなります。再発リスクは残りますが、生活への影響は大幅に減少します。未治療期間が短いほど寛解達成の可能性が高まりますが、個人差も大きいです。
症状が残っても対策でカバーすることが重要です。例えば、幻聴が残る場合でも、それを受け流す対策を日々続けることで、症状の影響を最小限に抑えることができます。
②生活能力の確保
生活面の安定は、病状安定と社会復帰の土台となります。統合失調症では陰性症状や認知機能障害が残り、生活への影響が出やすいため、以下の対策が重要です：
リハビリ的対策：
- 精神科デイケア：日々通って頭や体を使うリハビリを続け、陰性症状を減らし生活力を向上させる
- 作業所：より実践的な作業を通じて活動の場を確保する
- 日々頭と体を使うことを意識する
サポート的対策：
- 精神科の訪問看護：週1回の看護師訪問で生活と病状管理をサポート
- ホームヘルパー：定期的な訪問で生活をサポート
- 生活環境の調整：生活をシンプルにし、負担を減らして生活の安定を確保する
③再発予防
再発予防は社会復帰と生活安定の両面で重要です。再発すると積み重ねてきたものが崩れる可能性があり、認知機能障害など脳機能の悪化にもつながる恐れがあります。
再発のリスク要因：
1. 服薬の中断（最も危険）
2. 生活リズムの乱れ
3. 過剰なストレス
再発を防ぐために重要な要素：
1. 服薬を継続する
2. 生活リズムの安定を図る
3. ストレスマネジメントを行う
4. 病識を持つ
病識（自分の病気を認識し受け入れること）は、再発予防の取り組みを継続するための土台となります。自分の病気にしっかりと向き合い、徐々に受け入れていくことが重要です。
④リカバリー
リカバリーとは、統合失調症を持ちながらも、後ろ向きにならず自分の人生を生き抜くことを指します。社会復帰との関連は深いですが、病状によっては必ずしも社会復帰が必須というわけではありません。
近年では、統合失調症を抱えながらも社会復帰する例が増えています。障害を抱えつつ社会の中で前向きに生きていくことは、生きがいにもつながります。ただし、無理をしたときの再発リスクには注意が必要です。
病状の重さによっては社会復帰が困難な場合もありますが、そのような状況でも、現実的に無理のない範囲でベストを尽くしていくことが大切です。たとえ社会復帰できなくても、現実を直視して前を向いて生き続ける姿勢自体が一種のリカバリーと言えます。
（４）まとめ
統合失調症は再発リスクから安定後も薬が必要となり、薬なしの「治癒」は望みにくいのが現実です。しかし、できることは多くあります。主な治療目標は以下の4つです：
1. 症状改善
2. 生活能力の確保
3. 再発予防
4. リカバリー
たとえ症状や制限が残っても、それに向き合いながら前向きに生きていく姿勢が、自分にとっても周りにとっても非常に重要です。統合失調症と共に生きる中で、これらの目標を意識しながら、一歩ずつ前進していくことが大切です。
こころ診療所グループ（医療法人社団Heart　Station）
府中こころ診療所（東京都府中市宮西町1-1-3三和ビル2階、☎042-319-7887)
こころ診療所吉祥寺駅前(東京都武蔵野市吉祥寺南町1-4-3ニューセンタービル６階、☎0422-26-5695)
#統合失調症　#治療　#再発予防 　#リカバリー 　#精神科医　
【監修者】
医療法人社団Heart　Station　理事長　府中こころ診療所院長　春日雄一郎
精神科医（精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医）
2005年東京大学医学部卒業、NCNP病院、永寿会恩方病院等を経て、2014年に府中こころ診療所を開設、その後医療法人化し理事長に就任、2021年8月に分院「こころ診療所吉祥寺駅前」を開業。メンタルクリニックの現場で、心療内科・精神科の臨床に取り組み続けている。