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特報 " トニー死なないでくれ "
赤木圭一郎 ” 激突事故 ” の真相
裕ちゃんのスキー骨折事件で驚かされたと思ったら、こんどはさらにショッキングなスタア事故が起こった。
――第三の男・赤木、カート車を壁に激突させて重体 !
「赤木さん、死なないで ! 」「再起は可能か ? 」「日活の対策は ? 」……。そうしたファンの祈りと心配にこたえ、その後のトニーの症状を見守りながら事故の真相を追ってみよう……。
奇跡を呼んだトニーの体力
「今のところ医者の見通しによると、全快後の赤木君の額に傷が残る心配はない。頭がハゲたりもしないし、" 商売にさしつかえることはぜったいありません "と笑っていました。ただ、神経系統の調子で、口もとが時々かるくケイレンするかもしれないそうですが……。」
2月15日(赤木の事故の翌日)の午後おこなわれた記者会見の席上で、日活の江守常務は、赤木圭一郎の病状について非常に楽観的な発表をしていた。
「とにかく重傷ですね ? 」との記者団の質問に対しても「いや、重軽傷だよ、外からみたカタチは重傷だが、かんじんの脳の中身はぜんぜんやられていないから、ある意味では軽傷ともいえる。 なーに、大丈夫、大丈夫」
「しかし好事魔多しとはこのことです。昨年暮の堀社長の入院に引続き、裕次郎、赤木の負傷……私は神は信じないが運命は信じる。さすがに気味がわるくなったから、今日オハライをしてきました」(赤木の負傷の五時間後、撮影所内でドラムカンが爆発し、作業員の一人が死亡、一人が重傷するという不祥事も重なっている)。その日の午前、江守常務が打った手は " オハライ ” だけではない。急キョ撮影所で”製作営業連絡会議”を開き三月以降の作品スケジュールを猛変更することを決定した。
赤木が撮影中だった『激流に生きる男』は即刻中止し、『ろくでなし稼業』を三月三週封切りに繰上げ、三、四の二ヵ月間宍戸錠と小林旭の主演ものを三本ずつぶっつけて急場を切り抜け、五月三週には裕次郎の再起第一作『あいつと私』(石坂洋次郎原作)を予定。
「アキラとジョーが二月に三本ずつというのはたいへんだ。それ以上を要求すればバテがきて、快調日活にスキマ風が入るだろう。しかし、それまでに裕次郎がカムバックし、つづいて赤木も……」
と、すでに赤木の陽春の再起出演を計算に入れている江守常務である。
「医者も”赤木君のからだはボクサーなみだ"と驚いていた。心臓も強いから、72時間くらいの昏睡状態をもちこたえて快方に向かい一ヵ月間くらいで退院できるだろう」
不幸中の幸いは、赤木がぶつかった大道具倉庫の壁が板地の鉄製扉だったこと。「あれがコンクリートだったら、おそらくイチコロだっただろう。それに、彼がヘルメットをかぶっていたのがよかった。今後は、セット内のスタッフや見学者にもヘルメットをかぶってもらうことにしょう」と、はやくも今後の事故防止策に思いをこらす常務だったが……。
さて、かんじんの赤木の事故の真相はどうだったのか、いくたりかの関係者に当日の模様をふりかえっていただこう。
運命をかけた大手術
「14日のヒル12時半ころ『ろくでなし稼業』のラッシュを観終た僕が、二谷(英明)君といっしょにタビング・ルーム(録音室)から出て来たら、ヘルメットにサングラスをつけた赤木が変な車に乗ってノロノロ走っていた」
こう証言するのは、赤木とともに裕次郎の穴埋の本命とみられている宍戸錠だ。
赤木が「オーイ、ノイテクレー」などとタドタドしい運転をしているので「ブレーキのかけかたは知ってんのかい ? 」などとカラカイ半分に声をかけているうち、赤木の車は本館の建物にそって左折し、姿が見えなくなった。ところが、そのまま宍戸と二谷が食堂の玄関をくぐろうとしたとたん、赤木と別れた反対側の大道具倉庫のほうでドスン ! と音がして「たいへんだーッ」という誰かの叫び声。
宍戸と二谷がいそいで声の方へかけつけてみると、すでに車からほうりだされた赤木は地面の上にアオムケに倒れ、目はあけたまま、口から血をだし、手足をブルブルけいれんさせていた。
それからの騒ぎは、宍戸も夢中でよくおぼえていない。「赤木、しっかりしろーッ!」「瞳孔がひらいてる。もう死んでるんじゃないか?」「バカを言え、早く担架だ!担架だ!」「いや、脳出血のときは動かさないほうがいいぞッ ! 」――すっかり興奮状態になった人びとの手で赤木のからだは医務室に運ばれ、やがて1時ちょっと前、救急車が到着した。
撮影所近くの国領にある慈恵医大第三病院の二階17号室にかつぎこまれたとき、赤木は瀕死の昏睡状態だった。担当の早乙女医師の診断によれば、額が割れて頭ガイ底骨折、そのほか右眼と唇に軽傷、胸部に打撲、足に擦過傷。すぐカンフル注射などの応急処置をとった。赤木が撮影中だった『激流に生きる男』の共演者葉山良二がつきっきりで世話をしているうち、急を聞いた母親喜久さん(54)が山崎撮影所長夫妻にともなわれてかけつけてきた。懸命に気持ちを落着けようとするかのような蒼白な顔――喜久さんはこの日の朝、山崎所長邸に下宿している圭一郎を訪ねて鎌倉から上京してきた矢先きだったのだ。
続いて江守常務、石神宣伝部長、長門裕之なども馳せ参じ、赤木の兄の明さん(35)、妹の百合さん(17)も鎌倉からスッとんでくる。医師側や宍戸、二谷らも加えてみんなで協議したことは ” 手術をすべきかどうか " という重大問題だった。はげしく賛否両論に分かれたが「いちばん心配なのは脳内出血のいかんだ。これをつきとめるためには手術するほかない」との断が下され、夜の7時50分から9時10分まで、慈恵医大講師の鈴木正弥医博の執刀によって、運命をかけた大手術が行われた。
不安と緊張に包まれた四十分間――手術さいちゅう、赤木の弟分の和田浩治も控室にかけつけ、つづいてスラックス姿の北原三枝が能面のようにコワばった表情をのぞかせ……だが、手術は大成功だった。四ヵ所に穴をあけて前頭部の圧迫症状を取り除いたおかげで内出血の危険が去ったのだ。そして前頭骨キ裂骨折、硬膜下出血という正確な症状が判明した。
「あのとき思いきって手術しなかったら、おそらく赤木の命はなかっただろう」 ――さすが剛腹をもって鳴る江守常務も、ホっとためいきをついていた。
運転の名手トニーが
ふたたび事故当時に戻って、宍戸のいわゆる ” 赤木が乗っていたヘンな車 " を問題にしてみよう。
これは正式な名前を ”カート" (別掲の説明参照)といい、赤木が乗っていたのは小島大三氏(47・ジムコ貿易商会)の愛用車だ。
小島氏は一昨年秋ごろからカートに夢中になり、東宝の夏木陽介らオトキチ・クラブの面々とも交際があった。おそらくそのへんから噂をききつけたのか一月ほど前、とつぜん赤木から電話がかかってきて「ぜひ一度カートに乗ってみたい。そのつごうで、一台買ってみようと思う……」との依頼。
14日当日も電話で赤木と話した。「今日、例の車を貸してくれませんか」「乗る場所がありますか ? 」「なぁに、撮影所前のアゼ道でもいいよ」……というわけで、小島氏が乗用車の屋根へカートを乗せて撮影所を訪問したしだい。
「赤木さんは、昼食をすませてから、一時開始のセット撮影まで試乗してみるつもりだったようです。私が言う前にちゃんとヘルメットを用意していましたから、カートに乗るルールは知っているなと安心したのですが……」
小島氏の説明を聞いた赤木は正門のあたりからたのしそうに出発し、ノロいスピードで本館の角をまがり、もういちど正門のところへ戻ってくるつもりだったらしい。ところがなかなか姿が現われないので、小島氏が〈 へんだな……〉と思いはじめたとたん、例の騒ぎがおこった。
小島氏があわてて現場へスッとび、よく車をしらべてみると、いちど右へ切りかけたハンドルをまた元へ戻した形跡があり、前部の右の車輪がひん曲がっていた。事故現場の付近にいた水の江滝子プロデューサーも「赤木さんが裏門(右)の方へ曲がりかけたら、そちらから車が出てきた。だから急いでハンドルを左へ切ったのではないか」と語っていたそうだ。
とにかく、今のところ事故の原因は疑問に包まれたままだが、おそらく左へ曲がろうとしたとき、カートに不慣れな赤木が、あわてて力いっぱいのアクセルを踏んでしまったのではないか(カートは左足側にブレーキがついている) そう想像するムキが多く、警察側でもほぼこの見解をとっている。
「カートの運転法は簡単で、免許証はいらないし子どもでもすぐマスターできる。なぜ車の達人の赤木さんがああいう事故にあわれたのか……もののハズミとでもいうしか考えようがありません」(小島氏)
「カートは、まだ未知数の魅力の車だ。運転はやさしいが、油断は禁物。まだ不慣れな人が狭い所でスピードをだしすぎれば事故は必然的結果といっても過言でないでしょう」(『月刊自家用車』編集長の阿部幸夫氏)
こうした意見を総合したところ、赤木がふつうの車の達人だったことが、かえって今度の不幸を招く原因になった――これだけはまちがいないようだ。
いずれにせよ、小島氏は間接的な責任を痛感して苦悩の毎日だが、赤木のお母さんから「本人が好きで乗りたがったのです。どうぞ責任など感じないでください」と慰められるという感激の一幕もあった。
問題のカート(小型四輪車)とは?
二年ほど前から欧米で大流行しているが、もとは日本人のM氏(横浜在住)が発明したもので、これが逆輸入されているかたち。昨年の全米カート・レースでも、二世のジム・山根がチャンピオンになっている。
スピードは60から150キロまでだせるが、もともとレース用よりもフィギュア用として技術(とくにカーブの)をきそうためのもの。免許証は不要だが、道路上での運転は禁止されておりレース用トラック、飛行場など、一定の場所でしか許可されていない。そのため、これまでもアメリカでも事故は皆無の状態。
カートマニアは “スピード" "安全" 、そして地上スレスレに走りまわる”スリル"を魅力の三大要素にあげている。
現在、トーハツの国産も発売されているが、時価は4~5万円。今のところ、大量生産の段階ではないようだ。
(写真は「月刊自家用車」提供)
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